辰羅川を壁にもたれさせ、足を開かせて牛尾は器用に足の指で刺激していく。
「・・・んぁ、あっ!こん・・な、や、ぁ痛」
親指と人差し指ではさむように上下に数回動かし、先端を指先で器用に握る。
辰羅川はかすかな痛みと耐え切れない羞恥に必死に牛尾の足首をつかみ
必死に引き離そうとしたがその抵抗はむなしく、逆に腹に自身を押し付けられた。
「あぁっ!」
「全然力入ってないよ。ねぇ、そんなことするより服めくらないと汚れるんじゃない?」
「あ・・・ぅ」
辰羅川のアンダーシャツはすでに先走りで所々シミになっていた。
それを見せ付けるように、牛尾は足先でぐいぐいと辰羅川の自身を押す。
辰羅川は牛尾の足首をつかんでいた手をおずおずと服に持っていき、そっとめくりあげた。
牛尾の言いなりになることはシャクだったが、ユニフォームを汚すわけにはいかない。
できればこれ以上、なにも汚したくない。
「よくできました」
牛尾は自由になった足でさらに上下に扱く。
「ん、っあ、あぁぁ!!」

・
・
・

たとえかすんだ視界でも、行為のあとを見るのは耐え難く辰羅川は顔を上げた。
「他人にしてもらうのは初めて?」
腹を汚し肩で息をする自分の姿を楽しそうに眺めていた牛尾と目が合う。
今、この瞬間ほどメガネが無くてよかったと思ったときは無い。
「あ、当たり前・・です」
牛尾が中途半端な位置にあった辰羅川のアンダーシャツを引っ張ると
だらりと力なく下がった腕をなでて、それはするりと脱げた。
そして放り投げられた黒い布切れは保健室の夕闇に溶ける。
「ふぅん初めてか。それは困ったね」
その声にまぎれて聞こえた金属音に辰羅川が首をもたげると、
そのぼやけた視界に映ったのはベルトを外す牛尾の姿だった。
「どうする?慣れていないなら、この先はつらいと思うけど・・・
 それとも君が口でしてくれるかい?」
「・・・え?」
「君だけ気持ちいい思いなんてさせないよ」
力の抜けきっていた辰羅川の手は再びシーツを握り締め、震えはじめた。
一つの恐怖が去ったと思ったら、また新たな恐怖。
「今の君の選択肢は二つ。
 プライドを守り、抗ってムリヤリ僕に犯されて犠牲者になるか。
 自分を守り、従って自分から僕を受け入れ共犯者になるか」
「・・・」
「自分の体が大事なら答えはひとつだよ。
 自分から口でしてくれたほうが、ダメージが少ないのは解るよね?」
心のほうはどうか知らないけど・・・という言葉を牛尾はあえて口にしない。
「もう一度言う。自分のことをないがしろにする愛なんて
 そのうち全てを壊してしまうよ」

「・・・私は



               全てを壊す?何を言ってるんだろうこの人は。
               一番大事なものを壊したくないから今、こうなってるのに。



 貴方と共犯になる気は、無い」




その言葉を聞いた牛尾は、眉をひそめ言った。
「それはつまり、僕に犯されるっていうコト?」
「好きにすればいいで--
その言葉が終わるか終わらないか、その刹那に牛尾の手が辰羅川の髪を掴んだ。
ギリギリと上に引き上げ、あえぐ辰羅川の唇がかすかに開くのを見計らって
牛尾は自分の方へ引き寄せ、乱暴にキスをした。
辰羅川は髪の痛みを少しでも和らげようと、両手で体を支えた。
痛みと共に抵抗の術も消えることになるが、両手を自由に使えたところで牛尾に敵うはずもなかった。
それはこれまでで充分すぎるほど思い知らされている。
ただ、抵抗のための手ををそっちに持っていったことで結果的に「受け入れた」と思われそうで
ただそれだけが嫌だった。
どっちにしろ、無駄なことだったけれど。
強がりといえど許容の言葉を発してしまったのだし、
辰羅川にとっては許容も拒絶も、結果は苦痛でしかないのだから。

歯のぶつかる音が聞こえるくらいに激しく舌が口内を蹂躙していく。
さっきとは比べ物にならないくらい激しく、それは手加減も、優しさのかけらも無い。
それでも辰羅川はキスの合間に必死に呼吸をした。
さもなくばキスで殺されると思った。
深く深く侵入してくる牛尾の下で頭の中までかき回されているような錯覚を覚える。
やっと解放された時、互いの舌から唾液の糸が伝った。
「は、あぁ、うぅ」
「はぁはぁはぁ」
互いの吐息が混じりあう中、手袋の感触が辰羅川の胸の突起を押し包んだ。
「んっ」
せりあがる快感に背がしなる。
辰羅川にとってたった一つ幸いだったのは、夕闇が二人の姿を包み隠していたということ。
この屈辱の上、顔をも見られていたかと思うと、気が狂いそうだった。

牛尾が辰羅川の腰を引き寄せ、立ちひざをさせたまま
熱を放ったばかりの自身を優しく刺激していく。
一度達してまだ間もないのに、快感を搾り出すようにしごかれて、また反応し始めてしまう。
辰羅川が腰を引こうとしても、がっちりと固定されていて逃げられない。
「キャプテン、キャプテ、ン・・・」
うわ言のように繰り返す辰羅川の首筋に触れるだけのキスをして
牛尾は辰羅川の中心をなぶっていた手を後ろに移動させた。
「ひ、あぁ!」
今まで誰も触れたことの無いソコを、そっと撫でる。
「犯されるって言うのは、こういうことだよ。
 それでもいいの?今ならまだ引き返せる」
「・・・っ」
耳元で呟く牛尾の問いに辰羅川はぎゅっと肩を掴み返すことで応えた。
そうすることで示す、甘受の意。
「・・・明日、部活出れないね」
大腿を撫でて、さっき放たれた辰羅川の精液を一すくいし、それを潤滑油に指を一本侵入させた。
「あぁ!」
初めて体感する異物の感触に冷や汗と生理的な涙が浮かぶ。
「力抜いて。慣らすから」
「そん、む・・無理・・・です、イタ」
入り口で指を曲げると辰羅川がかすれた声で悲鳴をあげる。
いっそう縮こまる体に、牛尾は後ろだけでなくさまざまな場所に愛撫を加えていった。
舌で胸の飾りを舐めると、背中に電気が走ったように体がビクつく。
「あぁ!んぅ」
「フフ、気持ちよさそう。やらしいね」
牛尾が嘲るように笑うと、舌と同じくらい厚い吐息が、胸の敏感な部分を包んだ。
それは辰羅川に新たな恐怖と羞恥を植えつけ反抗心を奪っていく。
しかし恐怖よりも羞恥よりも怒りよりも
辰羅川の感情の大部分を占めているのは、牛尾によって引きずり出された快楽だった。
「ぃ、わな・・で」
そんなこと認めたくない。それでも体はこれ以上無いくらいにそれを認めてしまっている。
心よりも先に体の方が屈服してしまったようだ。
その証拠に、後ろを攻められながら空いている片方の手の中でなぶられている自身は
形を変え始めている。
前から後ろからまとわりつく牛尾の中で
辰羅川は流されたくないと言わんばかりに、ただ牛尾の肩をぎゅっと握っているだけだった。
ゆっくりと後ろに侵入してくる牛尾の指を辰羅川のソコは
追い出そうとするかのように収縮し、締め付ける。
「辰羅川くん、凄い動いてる。ナカ」
「・・・っ」
胸の突起から唇を離し、そんな卑猥な言葉を耳元まで囁きにきた牛尾に
辰羅川はなけなしの怒りから、掴んでいたその肩を思いっきり叩いた。
「痛いよ」
しかし牛尾はそれをまったく気にすることなく、聞き分けの無い子どもにするように
辰羅川の汗ばんだ額を撫でた。
そのしぐさがなぜか酷く優しくて、優しいぶん悔しくて、
辰羅川は唇を噛み、牛尾の肩に額を押し付けた。
これから襲う苦痛よりも、自分は被害者でなく共犯者だと感じてしまうことが怖い。
苦痛などより快楽の方が恐ろしい。それは犬飼への裏切りと同じだと思うから。
感じるのは怒りと屈辱だけでいい。
「そんなことしなくても、暗くてよく見えないんだけどね」
そう言いながら、牛尾は指を抜く。
「顔はいいから声を聞かせて?」
そうして、今度は2本、突き立てられた。